アジアはみな同じではないが

韓国、中国に関しては報道の通りだが、東南アジアには元々中国の影響が強い部分があるので、過度に楽観視するのではなく、それなりに注意する必要はあるだろう。タイでは地理的にも中国に近いし、中国系の住民も多い。テレビを見ればわかるが、テレビタレントの多くは中国系である。もっとも、彼らは中国本土の住民と違って反日教育を受けているわけでもなく、土着の住民との関係もあるため、極端な反日行動に向かう可能性は少ない。
ただ、現状では日本の影響力が大きすぎるため、バランスを取るために中国との関係を重視する傾向は出てくるかもしれない。タイ人というのはこれでなかなかしたたかな連中なので、周囲の国とのバランス感覚にすぐれているからだ。タイ人の性格からいって、100パーセントの親日とか100パーセントの反日というのはありえないのである。
FTA交渉でも、完全に日本経済圏に組み込まれるのには、それなりの抵抗を示していることから、現状でも日本との距離感が近すぎると感じているのだろう。タイは外資流入がなければやっていけない国であるが、外資で一番大きいのはもちろん日本である。日本人の多くは自らの体験から、アジアも日本と同じような発展の仕方をするのではないかと勘違いしているが、タイを見ても明らかなように、日本と違って民族資本が育っていないので日本と同じような経済発展はありえないのが常識である。つまり、タイは日本や他の外資のサブシステムに組み込まれる以外に生き残りの道はないのである。

これが日本だとヨーロッパでもアメリカでもない独自路線でやっていけるはずなのだが、経済重視で対米従属外交以外ありえないという極端な方向に向かう。ところが、タイは特定の国との関係で身動きが取れなくなるのは嫌なのである。
タイ人にとっての対日関係というのは、適度な距離感があって、必要なときにはいつでも助けを求めることができるほどの近さであればいいわけだ。これ以上、日本との被支配的な関係が深まらないのであれば、という留保を付けた上での親日なのである。これが完全に日本に支配されるようになれば反日ともなりうる。つまり、どこの国とも関係が深刻化すると、タイの安全保障にとって好ましくないという考えなのである。もちろん、中国の影響が深刻化すれば、日本を引き入れようと考えるのがタイ人である。